福井県と県内17市町、あわせて18自治体で活用される地域DX基盤「ふくアプリ」。
登録ユーザー20万人超、年間50以上の行政施策に活用され、地域通貨・電子商品券・健康ポイント・観光施策などを横断的に支えるプラットフォームへと成長しています。
運営するのは、福井銀行と福井新聞社が共同出資して設立した株式会社ふくいのデジタル。
その決済・ウォレット基盤には、独自Pay発行プラットフォーム「Pokepay(ポケペイ)」が採用されており、ポケットチェンジは電通総研と共同で2023年度から、この基盤を提供しています。(電通総研が提供する地域共創アプリ「Cuuvel(クーベル)」にPokepayを採用)
その取り組みは県内だけにとどまりません。
2025年10月16日には、石破茂首相(当時)がCEATEC2025(幕張メッセ)の「ふくいMaaS協議会・ふくいのデジタル」共同出展ブースを視察。
地銀・地方紙・自治体・企業が"オール福井"で推進する取り組みに耳を傾け、県外利用者が約2割を占めることを知って関心を示しました。
「ふくいMaaS」はDigi田甲子園(内閣官房主催)地方公共団体部門でベスト4に選出された実績もあります。
石破元首相のCEATEC2025視察について見る(ふくいのデジタル公式)
なぜ福井県では、地域通貨を単発の施策で終わらせず、複数自治体・複数部局が活用する地域DX基盤へと発展させることができたのでしょうか。
本記事では、独自インタビューをもとに、導入前の課題、福井モデルの仕組み、Pokepayを選んだ理由、導入後の変化を紹介します。(2025年12月23日インタビュー実施)
導入前の課題:自治体単独でDX基盤を構築する難しさ
当時、ふくいのデジタルが向き合っていた課題は、地域通貨やDX基盤を各自治体が個別に構築することの難しさでした。
福井県は人口約70万人規模。県内の各市町まで分けて考えると、一つひとつの自治体が独自にシステムを開発し、運用体制を整え、利用者や加盟店を獲得していくのは容易ではなく、一自治体単独で導入するには負担が大きい状況でした。
具体的には、次のような課題認識がありました。
- 地域通貨やDXを一自治体単独で導入するには負担が大きい
- システム整備を考えると「スクラッチ開発」が前提になりやすい
- 自治体ごと、部局ごとに目的や求める機能が異なる
- 一度導入して終わりではなく、地域に継続的に伴走する主体が必要
福井モデルの仕組み:共通基盤×個別運用
株式会社ふくいのデジタルは、自治体ごとに地域通貨や行政施策の仕組みを個別に構築するのではなく、「ふくアプリ」という共通プラットフォームを整備し、その決済・ウォレット基盤にPokepayを採用しました。
共通基盤をあらかじめ用意することで、新しい施策のたびにシステムをゼロから構築する必要がありません。
地域通貨や電子商品券だけでなく、観光、子育て支援、健康増進、省エネなど、自治体ごとの目的に応じて同じ基盤を活用できるようになりました。
「プラットフォームとして整備されているので、スクラッチでもともと発想していた方からすると、スピード感を持って対応できる」
― 株式会社ふくいのデジタル
また、システムだけでなく、事務局の組み方やレギュレーション、仕様設計など、これまでの施策で蓄積した運用ノウハウを活用できることも、施策をスムーズに展開できる理由の一つです。
システム面をPokepayに任せられる分、ふくいのデジタルは自治体ごとの調整や施策の企画に集中しやすくなります。
共通のデジタル基盤をPokepayで支え、地域側の企画・運用を株式会社ふくいのデジタルが担う。
この役割分担によって、福井県と県内17市町、あわせて18自治体へ活用が広がっています。
地元企業による伴走支援:福井銀行・福井新聞社の役割
一方、仕組みを用意するだけで自治体への活用が広がったわけではありません。
福井銀行と福井新聞社という、地域で長く事業を続けてきた企業が主体となって自治体に伴走したことも、福井モデルを広げるうえで重要な役割を果たしました。
「地元の、誰もが知っている企業が提供するものであれば理解されやすく、進めやすい。最初の一歩を踏み出す相手として認めていただけたのだと思います」
― 株式会社ふくいのデジタル
Pokepayという共通基盤と、地域を理解するふくいのデジタルの伴走力。
この組み合わせによって、自治体ごとに異なる要望にも対応しながら、県内全域へ活用を広げています。
福井県と17市町を合わせれば18自治体。観光に力を入れたい自治体もあれば、住民の生活支援、子育て、健康増進などを優先したい自治体もあります。
「18自治体あれば18通りのオーダーがあり、目指すものや要望も細かく違う」
― 株式会社ふくいのデジタル
共通して利用できる仕組みはプラットフォーム側に持ちながら、それぞれの施策に合わせて運用方法を調整する。
共通基盤と個別運用を組み合わせることで、自治体ごとにシステムを作り直すことなく、幅広い施策へ展開できるようになっています。
Pokepay採用の決め手:実績と「人・体制」への信頼
Pokepayの採用を決める際、重視したポイントは大きく2つありました。
①安定的に運用してきた実績
地域通貨は利用者のお金を扱う仕組みであり、機能の多さだけでなく安定運用できるかどうかが重要です。Pokepayがすでに複数のサービスで運用されていたことが、安心材料の一つになりました。
②開発・運営する「人・体制」への信頼
「システムはシステムだけで成り立つものではなく、結局は人が作っている」
― 株式会社ふくいのデジタル
プロダクトの機能だけではなく、導入後も一緒にサービスを作り、運用していけるチームかどうか。
そこまで含めて評価されたことが、Pokepay採用につながっています。
導入後の評価:安定運用と使いやすい管理画面
導入後、運用面で評価されているポイントは以下の2点です。
- ふくいのデジタル側からは、運用面について「障害が少なく、安定運用できている点」を評価いただいています。地域通貨事業は「地域」とついていても通貨である以上、安定性や安全な運行が非常に重要であり、その安定運用への信頼は大きなポイントになっています。
- また、管理画面の使いやすさについても、「集計やデータ確認といった作業の生産性が高く、管理側のことまで考えて作り込まれた仕組み」との評価をいただいています。
単に利用者が支払えるだけではなく、運営する自治体・事業者側が扱いやすいことも、継続的に複数施策へ活用するうえで重要なポイントになっています。
50以上の行政施策へ横展開:あえて「地域通貨」を前面に出さない理由
ふくアプリの大きな特徴は、プレミアム付き商品券や日常の決済だけに用途を限定していないことです。
「現在、年間50以上の行政施策で活用いただいています」
― 株式会社ふくいのデジタル
担当部局も観光・健康・子育て・防災など10近くにまたがります。
あえて「地域通貨」という言葉を前面に出しすぎないことで、特定の部署の事業という先入観を生まず、全庁的な活用につなげているのも特徴です。
「地域通貨と言い切ってしまうと、これは特定の課の事業だ、という先入観が生まれ、他部局への広がりを自ら制限してしまう。
自治体側も、実は地域通貨がやりたいわけではなく、スタンプラリーやアンケート、即時抽選をやりたいというケースがほとんどで、その行動を促すインセンティブとしてはぴコインがある、という形がほとんど」
― 株式会社ふくいのデジタル
導入効果①スピード:最短1週間で施策を実装
最大の効果はスピードです。
ゼロからシステムを構築する場合と比べ、既存のプラットフォームを活用することで大幅な期間短縮が可能になります。
従来なら仕様策定から事業開始まで数カ月〜半年を要していた施策が、最短1週間程度で実装できるケースも生まれています。
「見た目の費用だけを比較するとそれほど変わらないこともあるが、職員があまり詳しくなくてもスピード感を持って進められること、親会社である銀行・新聞社のアセットを活用した周知ができることなどを含めると、トータルではコストを抑えつつ効果を最大化できる。税金を投じること自体は同じでも、その税金を使った施策の効果を最大化できるという点には自信を持っている」
― 株式会社ふくいのデジタル
導入効果②事務負担・運用コストの軽減
事務負担や運用コストの軽減にもつながっています。
従来は紙媒体での周知や郵送によるインセンティブ配布に多くの手間と時間がかかっていましたが、ふくアプリ上であれば即時のインセンティブ付与が可能です。
結果として、現場職員は事務作業ではなく施策の企画そのものに注力できる環境が生まれています。
利用実績:登録者20万人超、県内外での使い分け
登録ユーザー数は20万人を超え(2025年11月末時点20万4,000人、うち県内約16.5万人・県外約3.9万人)、県民の生活インフラとして定着しつつあります。
観光施策には県外利用者、生活支援・健康施策には県内利用者と、自治体の目的に応じて使い分けられている点も特徴です。
「どこに予算をつけてインセンティブを設計するかによる。県外から人を呼ぶための観光周遊施策に予算をつける自治体もあれば、生活者支援・健康づくり・子育て支援など県民に目を向けた施策に予算をつける自治体もある」
― 株式会社ふくいのデジタル
全国からの注目:石破元首相のCEATEC2025視察
福井モデルは、地域内での利用拡大だけでなく、地域DXの先進的な取り組みとしても注目されています。
2025年10月16日、石破茂首相(当時)はCEATEC2025(千葉市・幕張メッセ)で、ふくいMaaS協議会とふくいのデジタルの共同出展ブースを視察しました。
ふくいMaaS協議会は福井市など嶺北11市町、大学、公共交通事業者、観光・商工団体、福井銀行、福井新聞社などで構成される組織です。
地銀・地方紙、福井県、県内市町、企業・団体などが「オール福井」で推進する「ふくアプリ」や「ふくいMaaS」について説明を受けた石破首相は、県外利用者について質問。
県外の観光客向け会員が約2割を占めると聞き、関心を示したと、ふくいのデジタルは公式に伝えています。
「ふくいMaaS」はDigi田甲子園(内閣官房主催)地方公共団体部門でベスト4に選出されるなど、産官学金の連携モデルとして評価を得てきました。
地域に根差した企業と行政、そしてデジタル基盤を提供する事業者が、それぞれの強みを持ち寄る。
この官民共創の仕組みそのものが、「福井モデル」の大きな特徴といえます。
石破元首相のCEATEC2025視察について見る(ふくいのデジタル公式)
今後の展望
今後の展望について、ふくいのデジタルでは、
「県民全員が本当に持つぐらいのアプリにしたい。ユーザー基盤・加盟店基盤をさらに拡大し、県民が当たり前に使う世界観を作りたい」
― 株式会社ふくいのデジタル
という展望を語っています。
地元の金融機関・メディア・自治体が同じ目線で伴走する「福井モデル」は、官民共創の好事例として注目を集めており、他地域からの参考事例としても関心が高まっています。
こんな課題をお持ちの自治体・企業におすすめ
- プレミアム商品券だけでなく複数の行政施策に地域通貨を活用したい
- 商工部門だけでなく、観光・健康・子育てなど複数部局へ展開したい
- システムを毎回ゼロから構築せず、施策をスピーディーに実行したい
- 紙の商品券やポイント、給付事業の運用負担を軽減したい
- 地域内で使える独自のデジタル地域通貨を作りたい
- 自治体単独ではなく、地域金融機関や地域企業と一緒に地域DXを進めたい
自治体によって、人口規模、加盟店数、実施したい施策、既存システム、予算やスケジュールは異なります。
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関連リンク
ふくアプリ公式サイト
ふくいのデジタル:石破総理CEATEC2025視察 お知らせ(2025年10月)
ポケットチェンジ公式発表:Pokepayが電通総研提供「Cuuvel」に採用(2025年4月/ふくアプリへの提供経緯を含む)
首長マガジン 2026年3月号
独自インタビュー(2025年12月23日実施、ふくいのデジタル・Pokepay)
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